言葉と動きが重なったとき、人は学ぶ

昔から「やってみてこそ理解する」と言われます。

人は頭で理解し、体で確かめ、ようやく「覚えた」となる。

言葉だけでは残らず、動きだけでも続きません。 インプットとアウトプットを行き来し、言葉と動きが重なったときに、学びは定着していく。

そんな実感を、日々の中で確かに感じています。

学びの見本

子どもがひらがなを覚える姿は、その仕組みをよく表しています。

最初は大きな見本をなぞることから始まり、線が曲がっていても、筆圧が安定しなくても、とにかく「なぞる」ことを繰り返す。やがて見本が薄くなり、自分の記憶を頼りに形を思い出しながら書こうとします。

「これは“し”?それとも“つ”?」と迷いながら何度も確かめ、少しずつ線が整っていく。 そうした往復を経て、気づけば見本がなくても字を書けるようになるのです。

しかもそのうち、字の形や書きぶりに個性まで表れはじめます。
ただ真似ていた頃にはなかった“自分の字”がそこに生まれるのです。

大人の学びも同じしくみ

これは子どもだけでなく、大人の学びにもあてはまります。

現場でも似たことを経験しました。スタッフに指示をしても思うようにいかず、「なんで?」と悩む日々。
言葉を工夫しても結果は変わりません。

そこで、相手の行動をそのまま言葉にして返してみたのです。
「声をかけたね」「ここまでやったね」「準備できたね」――

小さなことでも行動を言葉に置き換えて返すと、次の動きがスムーズになっていきました。
そのとき、「言葉と動きが重なった瞬間に、人は腑に落ちるのだ」と実感しました。

やり方は深まり、また変わっていく

子どもが文字に自分らしさを表し始めるように、大人の学びにも“その人らしさ”が表れてきます。

同じ言葉を返しても、受け止め方や動き方は人それぞれ。繰り返しの中で腑に落ちたことが、その人の強みや働き方となってにじみ出てきます。

だから学びは、ただ型を覚えることにとどまりません。言葉と動きを行き来させることで、その人なりの形が育ち、やがて“自分のやり方”へと深まっていきます。

そして一度身についた後も、学びは止まりません。
習得した後に「美しく書きたい」と文字を意識することもあれば、大人になって改めて練習することもあります。

同じように大人の学びや働き方も、その時々で磨かれ、変化し続けていく。

そうした変化を思いながら、子どもたちやスタッフの姿を見守っています。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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