「褒める」と「認める」はどう違う?

子どもと関わっていると、つい「えらいね」「すごいね」と声をかけたくなります。


それは子どもにとって嬉しい言葉であり、笑顔を引き出す魔法のような力があります。けれど同時に、「褒められるためにやる」「評価されるために頑張る」という意識につながってしまうこともあります。

私自身、気づけば“評価する人”の立場に立ってしまうことがあるのです。

一方で、「認める」という関わり方があります。

「自分で最後までできたね」「ここまで準備できたね」―― これは結果だけでなく、その子が歩んできた過程や、挑戦している姿そのものを言葉にして返すことです。


そこには評価の上下はなく、「一緒に見ているよ」というメッセージが含まれています。

違いを整理してみると
褒める認める
「えらいね」「すごいね」など価値判断をのせる「できたね」「工夫したね」など事実を返す
外からの評価が基準になる子ども自身の取り組みを基準にする
嬉しいけれど、評価待ちになりやすい「自分でできた」と気づける
外発的動機づけにつながる内発的動機づけにつながる
こんなこともあります

事業所では、片付けの時間に近づくと「そろそろだよ~」「もう少しで~」といった、かなりアバウトな声かけをすることがあります。

個別に指示するのではなく、全体の雰囲気で流れをつくっていくイメージです。

その中で、ある子が片づけを後回しにしていたことがありました。
こちらから直接「片付けてね」とは言わず、あえて全体への呼びかけだけにとどめて様子を見ていました。

すると、みんなが着席しはじめたころに、その子は自分のタイミングでそっと使っていたものを片付けたのです。


その瞬間を見逃さず、「今日は自分から始められたね」と声をかけると、なんとも清々しい表情で席に着いていました。

数日後、その子が率先して片づけをする姿が見られました。


無理に指示したわけでも、特別に褒め立てたわけでもありません。

ただ“自分からできた”という事実を認めてもらったことが、その子の中に「もっとやってみようかな」という自然な気持ちを生んだのだと思います。

内発的動機づけ

これを心理学では内発的動機づけというそうです。


外からのご褒美や評価ではなく、本人の内側から湧いてくる「やってみたい」「できるようになりたい」といった気持ち。

認める言葉は、この内発的なやる気を引き出すサポートになります。
「評価を待つ子」から「自分で進んでいく子」へ。

やっぱりバランス

褒めることも、認めることも、どちらも子どもにとって大切です。

ただ、褒めるだけでは“評価する人とされる人”の関係に偏りがちです。 認める言葉は、その子の歩みを一緒に味わっていることを伝えます。

支援においては、この二つをバランスよく使い分けることが求められます。どちらの言葉も、子どもに安心や自信を育てる力を持っているからです。

「褒める」と「認める」――

あなたなら、どんな場面で使い分けますか?

子どもの表情を思い浮かべながら考えてみると、きっとそのヒントが見つかるはずです。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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