自立ってどこから始まる?

自立を考えるとき、まず大人の姿から。

大人になってから、「結局は自分で決めなければならないんだ」と感じる場面に出会います。


転職や住む場所を選ぶとき、あるいは子どもとの関わり方に迷うとき。人に相談はできても、最終的に決めるのは自分自身です。

でも、その決断を前に立ちすくんでしまうこともありますよね。

そんなとき私は、「あのとき、もっと自分で選ぶ練習をしていたらどうだっただろう」と思い返すことも少なくありません。

幼少期に育まれる“自分で決める力”

子どもを見ていると、「自立」はできることの数ではなく、その奥にある気持ちから始まっているのだと実感します。

ブロックを積み木箱に片づけるとき、ほんの一瞬の「自分でやりたい」というまなざしに気づくことがあります。

ボタンを留めようと指先をこわばらせながらも、振り返って「できた!」と笑う姿。

それを見守るとき、いつも「これが大人になったときの“自分で決める力”につながっていくんだ」と思わされます。

大人の役割は「結果よりプロセスを支えること」

現場で、子どもが迷っている時間はとても長く感じます。
私もつい、「早くしてあげた方がいいかな」と手を伸ばしそうになることがあります。

けれども、その瞬間に踏みとどまって見守ったときほど、子どもの表情に“自信の芽”が宿るのを見たことがあります。


「できた」という結果よりも、「自分で選んで確かめた」という体験。

それを大切にしてあげることこそ、私たち大人にできる支援だと感じています。

自立は小さな選択の積み重ね

ある子は、宿題が苦手でいつも後回しにしていました。

でも、ある日のこと。「今日は自分でやる」と宣言したのです。

結局途中で助けが必要になりましたが、その小さな一言が、大きな自立の一歩に見えました。

大人になってから何かを決めるとき、ふとこうした子どもの姿を思い出します。

“完璧じゃなくても、自分で決めて進んでいける”――その姿に、私自身も励まされてきたのです。

すぐそこにある“自立の始まり”

自立は、大人になって突然生まれるものではありません。

子ども時代に「やってみたい」「できた」と感じた瞬間が、長い時間をかけて積み重なり、やがて大人になったとき「自分で決められる力」として花開くのだと思います。

だから、子どもの「やってみたい」という小さな声を見逃さないようにしたい。 大人として見守りながら、その芽を未来へとつなげていく――

そんな気持ちで日々の関わりを持てるようになりたいですね。


アタッチメント理論ーボウルビィ

幼少期に「安心できる人との関係(安全基地)」があると、子どもは探索行動に出やすくなる。
・安心して「自分でやってみる」
・失敗しても戻れる拠点がある
この繰り返しが主体性や自立心の基盤になるとされている。
※大人になっても、自立的に行動できる人は「安心して挑戦した幼少期の体験」を持っているケースが多い。
(ストレンジ・シチュエーション法、成人アタッチメント研究)


自己決定理論ーデシ&ライアン

人が内発的に動くためには、3つの基本的欲求が必要
・有能感(できると感じる)
・自律性(自分で選んでいる感覚)
・関係性(支えてくれる人がいる)
これらは大人になっても変わらない普遍的な欲求だが、その土台は幼少期からの経験で培われると言われている。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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