それぞれの支援が積み重なるとき ― 20のエッセンス

根拠を持ちながら、コツコツと積み重ねる。

失敗も成功も、一つずつ経験を重ねてきた。

このコラム通して、“支援の道しるべ”を少しずつ探ってきました。

今回は、そのエッセンスを振り返りながらまとめてみたいと思います。

ムカデのジレンマ

自然に歩けていたムカデが、「どうやって足を動かしているの?」と問われた途端、意識しすぎて歩けなくなってしまう寓話があります。

意識しすぎると、かえって動けなくなる。

軽やかな意識

でも、何も考えずにただ繰り返すだけでは成長にはつながりません。

支援は一気に大きな変化を生むものではなく、小さな積み重ねのステップです。

その階段を上がるとき、支援者にとって大切な視点を20の言葉にしました。

20のエッセンス

これは正解ではなく、支援者が立ち戻れる目印だと思ってます。

【気づきと姿勢の準備】

支援のスタートは「気づくこと」から。まずは立ち止まり、子どもの声に耳を澄ませる姿勢が土台。

1,気づく
— 表情やしぐさの小さな変化に目をとめる

2,立ち止まる
— 指示の前に一呼吸おく

3,聞く
— 今の気持ちや困り感を短くたずねる

【安心の土台づくり】

安心があってこそ、子どもは挑戦できます。環境や言葉かけで「大丈夫」を伝えることが大切。

4,受けとめる
— 感情の名前を返して安心をつくる

5,予告する
— 見通しを伝えて不安を和らげる

6,整える
— 音・人数・課題の負荷を微調整する

【行動を引き出す関わり】

「やってみよう」と思える一歩を後押しするのが支援者の役割。無理なく挑戦できるきっかけをつくる。

7,待つ
— 子どものタイミングを尊重する

8,選べる
— 二択など小さな選択で主導権を渡す

9,促す
— 一歩目だけを一緒に始める

【成果を育てる】

成功は小さくても積み重なると大きな力になります。気づきや喜びを一緒に分かち合うことが、次の挑戦につながる。

10,認める
— 事実ベースで具体に返す

11,祝う
— ささやかな成功を一緒に喜ぶ

12,振り返る
— 「何がうまくいった?」を言葉にする

【視点を広げる】

子ども自身の成長を見える化し、未来を一緒に描く。その繰り返しが自己理解と自信を育てる。

13,比べ直す
— 他者比較→自己比較へ軸を移す

14,見通す
— 次の“小さな一歩”を一緒に決める

15,役割化
— 日常の役割に落とし込む

16,連ねる
— 続いた日を見える化する

【支援者自身の成長】

支援は一人では積み上がりません。チームやつながりの中で学びを深め、支援者自身も更新する。

17,つながる
— 家庭・学校・仲間と共有を広げる

18,揺らぎを抱える
— できない日も含めてOKにする

19,学び合う
— チームで気づきと手立てを更新する

20,まなざしを更新
— 子ども像を“今”に合わせて見直す

役割化と目印

「なんとなく」でやっているときには気づけないことも、役割として言葉にした途端に「あれ?」と見えてくることがあります。

これは自分を責めるためではなく、無意識のクセを映し出す鏡です。

役割化は、ただ理解することと少し違います。

「言葉で理解する」は自分の中で腑に落ちること。

一方で「役割化する」は、それを言葉にして位置づけ、他者と共有できる形にすることです。

役割化と目印
無意識の行動
(なんとなく)
役割化するとこうなる 効果
なんとなく見守っている 「この場面では“待つ”を意識している」と言える 自分の意図が明確になり、振り返りやすい
机を動かしたら落ち着いた 「環境を“整える”ことで安心感が出た」と整理して伝える チームで共有でき、他の場面でも応用できる
片付けを手伝っている 「片付けの“促し役”を担う」と役割として表明する チームで分担しやすくなり、責任が明確になる
「今日はよくがんばってた」と思う 「“認める”を言葉で返したら次につながった」と記録できる 成果が言葉になり、子どもや他者に伝わりやすい
Aさんが自然にやっている支援 「“予告する”を担当するとスムーズになる」と分担できる 個人の経験が仕組み化され、再現性が高まる

大切なのは、これらが「唯一の正解」ではなく目印だということ。

迷ったときに立ち戻れる小さなサイン。

目印があるから安心して歩けるし、目印に縛られないからこそ柔らかい関わりが生まれると考えています。

支援の歩みが示すもの

理論やエッセンスは万能の答えではありません。

それでも私たちが言葉にして整理するのは、経験を共有し、支援を次へつないでいくため。

積み重ねの先に自然と表れる“楽しめている”感覚は、才能や性格ではなく、プロセスを重ねてきた証――

支援が息づいているサインです。

そのサインを信じて、また次の一歩を歩んでいけるのだと思います。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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