声かけの“タイミング”が変えるもの

同じ言葉でも、伝えるタイミングによって子どもの反応は大きく変わるんですよね。

ある子が片づけを渋っていたときのこと。

先に「片づけてね」と声をかけたら、表情が曇り、動きも止まってしまいました。

けれど、遊びを一区切りつけて自分から道具を持った瞬間に「いいね、片づけ始められたね」と声を返すと、自然に次の動きへつながっていったのです。

「何を言うか」より「いつ言うか」

支援の中で「何を言うか」と同じくらい大切なのが「いつ言うか」です。

内容が正しくても、タイミングを間違えると子どもにとってはプレッシャーになってしまいます。

大人の「早くやってほしい」という気持ちが先に出ると、子どもは「責められている」と感じて動きが止まることがあります。

反対に、子どもが動き出したタイミングを逃さずに言葉を返すと、「見てくれている」という安心感や「できている」という自信につながります。

タイミングがもたらす違い

早すぎる声かけ:負担や抵抗感を生みやすい

ちょうどよい声かけ:行動を後押しし、自信や意欲につながる

遅すぎる声かけ:流れが途切れ、やる気を削いでしまうこともある

ほんの一瞬の違いですが、その積み重ねが子どもの「やってみよう」という気持ちを育てていきます。

他の場面でも

この“タイミングの力”は片づけだけではありません。

学習:
宿題を始める前に「早くやって」と言うと抵抗感が強まるが、机に座った瞬間に「準備できたね」と返すと取り組みやすい。

運動:
縄跳びを手にした瞬間に「挑戦してみようか」と言うと軽快に跳び出す。準備の前に急かすと「できないかも」と構えてしまう。

生活:
手洗いに向かった瞬間に「いいね」と声をかけると自然に最後まで続く。先に「洗って!」と言うと、動きが止まることもある。

経験上感じている実践のヒント

声かけのタイミングをうまく見計らうのは、最初から簡単ではありません。

けれど、経験上いくつかの工夫を意識すると少しずつ身につくと感じています。

子どもの「動き始めのサイン」を観察する

・体の動きが変わる(立ち上がる、手を伸ばす、視線を動かす)

・表情が切り替わる(ふっと真顔になる、キョロキョロする)

・遊びや作業を区切ったような仕草(おもちゃを置く、ため息をつく)。

→ こうした瞬間が「切り替えの入り口」になりやすいと思います。

声かけを「先取りしない」練習をする

・すぐに言いたくなる場面で、まず3秒待ってみる

・「まだ言わない」を意識することで、子どもの動きを見るクセがつく

→ この“待つ”の経験が、タイミング感覚を育てます。

子どものリズムを知る

・片づけに取りかかるまで5分かかる子、机に向かえばすぐ始められる子…

・その子ごとの「いつ動きやすいか」を理解しておくと、声かけの的中率が高まります。

フィードバックで調整する

・声をかけて動きが止まったら「早かったかも」と振り返る

・逆にすんなり進んだら「今のタイミングよかった」と確認する

→ 成功と失敗の積み重ねで、徐々に“感覚”が磨かれていきます。

「観察 → 少し待つ → その子のリズムを理解 → 振り返りで調整」

このサイクルを繰り返すことで、声かけのタイミングは自然に身についていくと思いますよ。

一瞬の違いが育てるもの

声かけは、ほんの一瞬の違いで子どもの反応を大きく変えます。

その積み重ねが意欲や自信を育て、信頼関係を深めていく。

言葉にすると難しく思えますが、意識すると意外とすぐ身に付けられますよ。

ほんの「一拍待ってみる」ことからチャレンジしてみてくださいね。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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