一緒に笑う力
子どもたちの笑い声が響くとき、場の空気がふっと軽くなる瞬間があります。
誰かが冗談を言ったわけでもないのに、目が合って笑い合う。
その一瞬に、言葉より深いつながりが生まれているように感じます。
同じことで笑える――それは、安心して一緒にいられる証です。
相手を信頼しているからこそ、心の力を抜いて笑える。
その空気がある場所には、自然とやさしいやりとりが増えていきます。
一緒にいることの楽しさが広がるとき
ある日の活動中、机を囲んで絵を描いていた子どもたちがいました。
誰かがちょっと描きすぎて、色がにじんでしまった瞬間。
「うわー」と思わず声が上がり、次の瞬間に全員で大笑い。
気づけば、隣の子が「これも混ぜちゃおう」と新しい色をつくっていました。
その光景を見ながら、「笑いがつくる距離の近さ」を感じました。
特別なルールも、説明もいらない。
“笑う”という共有体験があるだけで、子どもたちは自然に隣り合い、関わり合いを広げていくのです。
笑いは、言葉を超えたコミュニケーション
心理学では、人が同じタイミングで笑うことを「情動の共有」と呼ぶそうです。
脳の中で共感を司る神経が働き、相手の気持ちを“自分ごと”として感じるのだとか。
つまり、一緒に笑うということは――「あなたと一緒にいるのが楽しい」というサインでもあります。
支援の現場でも、笑いが多い日は子ども同士の会話が増え、動きもやわらかくなります。
「これ見て!」と誰かが呼びかけ、それに笑って応える。
その繰り返しが、安心と信頼の空気を育てていくのだと思います。
大人もまた、笑いに学ぶ
子どもたちの笑い声を聞いていると、私たち大人の表情までほぐれていきます。
大人同士でも、同じことで笑えたときの距離の近さは特別ですよね。
支援の現場でも職場でも、笑いがあるときには「相手を信じている空気」が流れています。
だからこそ、笑いは“余白”ではなく“つながり”の中心にあるのだと思います。
真面目に考える時間も大事ですが、笑い合える時間があるからこそ、人はもう一歩踏み出せる。
一緒に笑えるということ
「笑い」は、支援の道具ではありません。
でも、関係を深めていくうえで欠かせない“力”です。
その場にいる誰かが笑いかけ、もう一人がそれを受け取る。
そんな瞬間を積み重ねながら、子どもたちは互いを知り、信頼を育てていきます。
一緒に笑える関係がある。
それだけで、その日一日の景色が変わります。
きっと、子どもたちの世界も、私たちの仕事も、そこから少しずつ明るくなっていくのだと思います。
コラムについて
日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。
著者プロフィール
こどもサポート はるかぜ 代表
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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