できないに目を向けるのではなく、“過程”に光をあてる
子どもたちと関わっていると、「あれ、まだできないのかな」と感じる瞬間が少なくありません。
けれど、その“できない”の中には、実はたくさんの“やっている途中”が隠れています。
できない、の奥にある整理の時間
外出の準備で、みんなが並び始めたときのこと。
ある子が荷物を持ったまま、その場に立ち止まっていました。
「並ぼ?」と声をかけると、こちらを見て小さくうなずきます。でもすぐには動かず、列のほうをじっと見つめていました。
ただ迷っているようにも見えましたが、よく見ると
「今かな」「どこに入ろうかな」と、タイミングを探している様子。
数秒の沈黙のあと、その子は自分で列の最後尾に加わりました。
そのとき、「できなかった」ではなく「自分の中で整理していたんだ」と気づかされました。
“できない”の中にも流れている時間
支援の現場では、つい行動の有無だけで判断してしまいがちです。「できるようになった」という結果は嬉しいですし。
でも、私たちが本当に見届けたいのは、そこに至るまでのプロセス、その前に流れている“整える時間”こそが、その子らしさの表れ。
「促し→行動」の直線的な理解ではなく、
“考えてから動く”というプロセス全体を支援として見届けることが大切なのだと思います。
子どもが動けなかったその数秒の間にも、
「今、何が起きているのか」「どうしたらいいのか」と考える力が働いています。
それはまさに、成長の途中にある小さな“思考の芽”。
「過程を見る支援」がつくる安心
ある子が、縄跳びを練習していました。何度やっても引っかかってしまう。
それでも少しずつタイミングをつかもうと、口でリズムを取りながら跳び続ける姿がありました。
その横でスタッフが「今のリズム、すごくよかったよ」と声をかけると、ぱっと笑顔がこぼれたのです。
“跳べた”ではなく、“挑戦している”ことを認められた瞬間でした。
こうした経験を重ねていくと、子どもは「できたかどうか」ではなく「やってみよう」と思えるようになります。
その積み重ねが、次の挑戦を支える土台になっていくのだと思います。
結果よりも、そこにあるプロセスを
行動がスムーズにできるようになることも大切ですが、もっと大事なのは、どう理解し、どう動こうとしたかという過程。
促されたあとに「自分で考え、決めて、動けた」その一連の流れが身についていくことが、
「できるようになる」への本当の道のりです。
支援の中で私たちができるのは、そのプロセスが安全に、安心して試せるように整えること。
結果を急がず、その途中にある変化を拾い上げることです。
私たちも“過程の途中”
思えば、大人である私たち自身も、日々の支援や仕事の中で“まだできない”ことを抱えています。
子どもたちと同じように、試しながら、整えながら歩いている。
だからこそ、「今はまだ途中なんだ」と思える視点は、子どもだけでなく、私たち自身への励ましにもなるのだと思います。
過程に光をあてる。
その視点の変化が、関わりの空気をやさしく変えていくのだと思います。
💬 補足:なぜ“できない”ように見えるのか
「できない」と感じる背景には、いくつもの理由が重なっていることがあります。
- 何をすればいいのか分からない(見通しの不足)
- 分かっていても動けない(気持ちや実行機能の負荷)
- 情報が多すぎて処理できない(環境・感覚の要因)
- 自分のペースを守ろうとしている(自己調整の時間)
- 過去の経験から不安がある(記憶・学習の影響)
“できない”という言葉の裏には、「考えようとしている途中」が隠れています。
だからこそ、その“過程”を見守るまなざしが大切なのだと思います。
コラムについて
日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。
著者プロフィール
こどもサポート はるかぜ 代表
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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