見守ることと放っておくことの違い

子どもを「見守る」という言葉は、支援の現場でもよく使われます。

けれど、その線引きはとてもあいまいで、「ただ見ているだけ」になってしまうこともあります。

私はある時期、「見守る=手を出さない」と考えていたことがありました。

けれど実際には、見守るというのは“関わらない”ことではありません。

むしろ、関わる力が試される瞬間なのだと感じています。

見守りには「意図」がある

子どもが自分で挑戦しているとき、すぐに手を貸したくなるものです。

でも、その一歩をこらえて見守ると、思いがけない成長の姿が見えることがあります。

たとえば、上着のファスナーを最後まで上げようと指先を動かしているとき。

声をかけずに見ているようでいて、実は心の中では「もうちょっとだ」と願いながら見届けている。

その“祈りのようなまなざし”にこそ、支援の意図が宿っています。

見守るとは、ただ静止している状態ではなく、「どうなっても受け止める準備をしている」姿勢なのだと思います。

放っておくとは「関心を離す」こと

一方で、“放っておく”には「関わりを手放す」という響きがあります。

声をかけるでもなく、様子を見返すでもなく、ただ距離を置いてしまう。

それは、子どもの中に「自分は見られていない」という孤独を残します。

子どもたちは、見られていることで安心し、挑戦する勇気を持ちます。

見守りとは、安心のまなざしをそっと注ぎ続けること。

放っておくとは、そのまなざしが届かない状態のこと。

たとえ外見は同じ“何もしていない”ように見えても、その中身はまったく違うのです。

距離のとり方が伝えるもの

ある日の活動中、片づけをせずに座り込んでいる子がいました。

近づけばすぐに動かせそう。でも、その日はあえて少し離れた位置から声をかけました。

「準備、あとで一緒にしようか?」

その瞬間、子どもが顔を上げて小さくうなずきました。

私の声を待っていたのだと思います。

距離をとりながらも、心の糸はつながっていた

そんなとき、“見守る”という言葉の本当の意味を感じます。

いつでも「届く距離」にいること

見守ることと放っておくことの違いを分けるのは、子どもにとって「届く距離」にいるかどうか、だと思います。

困ったときに、ふと顔を上げた先にあなたがいる。

それが子どもにとっての安心です。

「任せる」と「見捨てない」を両立させる。

そのバランスの中に、支援の深さがあるのだと思います。

見守る=関わりながら見届けること

見守るとは、ただ見ていることではなく、子どもと一緒に感じ、動きながら見届ける行為です。

声をかけずにそばにいるときも、実は“何を見て、どう受け止めているか”という関わりが生まれています。

観察も同じ。

行動を記録することが目的ではなく、その一瞬の背景にある気持ちや流れを一緒に感じ取ることが大切です。

共に感じ、共に動く。

それが“見守る”という支援のかたちなのだと思います。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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