喜びがつなぐ学び ― 共有の先に生まれるもの
「できた!」を共有したあと、現場には不思議な余韻が残ります。
それは単なる達成感ではなく、「次はどう関わろうか」という静かな前向きさ。
その空気を感じるたびに、私は“喜びの共有”がもたらす力を改めて思います。
ある日、スタッフが子どもの挑戦を見届けて「できたね」と声をかけたとき、
そばにいた別のスタッフが自然に笑顔になりました。
その笑顔を見て、今度は子どもが「〇〇さんも見てた?」と目を向ける。
気づけば、誰もが同じ方向を向いていた。
たった一つの「できた!」が、こんなにも人の心を動かすのかと驚かされました。
喜びは、言葉よりも早く場を伝っていきます。
声をかけた本人だけでなく、見ていた人、通りすがった人まで巻き込みながら、
“関わりの輪”をひろげていく。
そこから生まれるのは、「どうすればあの瞬間をもう一度つくれるだろう」という問いです。
共有された喜びは、次の支援のヒントへと自然に変わっていくのです。
「待てたね」という一言をかけたスタッフが、
後から「どうしてあの時は待てたのかな」と自分に問い直す。
「声のトーンかな」「姿勢の距離感かな」と考えるうちに、
次の場面での工夫が生まれていく。
こうして、喜びの共有は“学びの共有”へと静かに姿を変えていきます。
大事なのは、結果の共有で終わらせないことだと思っています。
うまくいった場面を「よかったね」で終わらせず、
「なぜうまくいったのか」を一緒に味わう。
その一歩があるだけで、支援の質はぐっと深まっていく。
喜びを共有することは、支援者同士が同じ方向を向くための合図でもあります。
そしてその喜びが次の工夫や気づきを呼び、
また新しい“できた!”へとつながっていく。
支援の現場は、日々の小さな成功の連鎖でできています。
誰かの「できた!」が、次の誰かの「やってみよう」を生む。
そんな循環の中で、私たち自身もまた学び続けているのだと思います。
コラムについて
日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。
著者プロフィール
こどもサポート はるかぜ 代表
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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