安心できる関係があるとき、子どもはどう挑戦できるか

夏休みに海へ出かけたときのことです。

はじめて行ったときは何も準備していなくて、波打ち際でパチャパチャ遊ぶのが精一杯でした。

「これはちょっと物足りないな…」と思って、次に浮き輪を持って行ったら大違い!

安心感があるからか、気づけばガンガン沖まで泳ぎ出してしまって、スタッフが慌てるほどでした。

でもその安心感があったからこそ、思い切り挑戦できたんだと思います。

子どもたちが挑戦するときの安心感も、それによく似ています。

浮き輪やライフジャケットがあるから「やってみようかな」と思えるように、子どもにとっては“安心できる人がそばにいること”が、その挑戦を支える力になるのです。

挑戦の一歩を支えるもの

子どもが何かに挑戦するとき、背中を押しているのは「やる気」や「能力」だけではありません。

その一歩を踏み出す土台にあるのは、「安心できる人がそばにいる」というあの感覚です。

安心があるからこそ、踏み出せる

ある子は人前で話すことが苦手で、みんなの前に立つと「何をどう話せばいいのか」わからなくなってしまいます。

けれど、そばに安心できる人がいると、不思議と声が出てくることがあります。

つっかえても一緒に声を重ねるうちに、気づけば自分の言葉で発表を進めている。

こうした場面、よく見かけませんか。

心理学でも、不安が大きいと頭の中の“作業スペース(ワーキングメモリ)”がいっぱいになり、挑戦する余裕がなくなるといわれています。

けれど安心感で、その不安が小さくなり、心に“空きスペース”が生まれる。

発達心理学では、こうした存在を「安全基地」と呼びます。安心の土台があるからこそ、「ちょっとやってみようかな」という気持ちが芽生えるのですね。

大人ができること

安心感は一気に生まれるものではなく、些細な関わりのなかから育まれます。

・声をかけたら振り返ってもらえた

・話をじっくり聞いてもらえた

・毎日同じように迎えてもらえた

・失敗しても大丈夫だと伝えてもらえた

こうした日常が重なって、「この人は自分のそばにいてくれる」という確信につながります。

読んでいるあなたにも、きっとそんな存在を思い出せるのではないでしょうか。

少しの当たり前

「うまくできたか」より「やってみようとしたこと」に光をあてる。

安心できる関係があるからこそ、子どもたちは自分の世界を少しずつ広げていけます。

「試してみたい」という気持ちが芽生える瞬間を、そばで支えたいですね。

その連なりが、子どもたちの挑戦する力を静かに育てていくのだと思います。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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