場が育てる支援 ― 空気の中にある学び
ある日の活動後、スタッフ同士でこんな会話がありました。
「今日、〇〇くんが自分から片づけててびっくりしたね」
「うん、何も言わなくても動いてた」
誰かが気づき、誰かが共感し、そこに少し笑いがこぼれる。
そんな会話が自然に生まれている光景を見たとき、私は「ああ、この場が育ってきたな」と感じました。
“共有”から“循環”へ
支援は、ひとりの努力や工夫だけで完結しません。
誰かが気づいたことがチームに共有され、また別の場面で誰かがその視点を思い出す。
すると、同じような場面で自然と似た関わりが生まれます。
たとえば、あるスタッフが「声をかけずに待ってみた」経験を話した翌週、別のスタッフが同じように“待つ”関わりを試してみる。
すると今度は「本当に動いたね」とその子の変化に驚く。
その連鎖が、支援の場全体にやわらかな空気をつくっていくのです。
言葉にしなくても伝わる“温度”
共有は、会議や記録だけで起こるものではありません。
子どもへのまなざしや、声のトーン、動作のテンポ。
そうした一つひとつの“温度”が、場に染み込むように広がっていきます。
スタッフがゆっくりと片づけを始めると、子どもたちも自然に動き出す。
「手伝って」ではなく、「一緒にやろう」という空気が場にある。
これは言葉ではなく、場そのものが支援している状態なのだと思います。
“育てる”ではなく、“育っていく”
支援の文化は、つくるものではなく、積み重ねの中で“育っていく”ものだと感じます。
誰かが意識して行動したことが、時間をかけて場に根づき、やがて自然と受け継がれていく。
新しいスタッフが入っても、その空気を感じ取って「こういう雰囲気なんですね」と言って共感してくれると、何より嬉しくなりますよね。
支援者一人ひとりの姿勢が、いつの間にか場の学びに変わっていく。
それはきっと、子どもたちの安心や挑戦にもつながっているのだと思います。
“支援が場を育て、場が支援を育てる”
そんな循環が生まれるとき、私たちはもう一段深い学びの中にいるのかもしれません。


