できることを見る力――日常で実践する3つの視点
(シリーズでお届けしています。)
前回はこちら:なぜ「できること」に目を向けられないのか?
「できることを見ましょう」
そう言われても、現実には“できないこと”がどうしても目につきやすいものです。だからこそ、「できること」を見ていくにはちょっとしたコツがいります。
今回は、日常の中で意識できる3つの視点をお伝えしますね。
① 日常の小さなことを拾う
“できること”は案外、目立たない形で日常に散らばっています。
自分から靴を並べた、友だちに声をかけた、昨日より少し長く座っていられた――
そういう小さな行動が「できること」です。
大きな変化ではなく、「あ、今ちょっとできたな」と思える瞬間を拾えるかどうか。
靴を自分で並べた、カバンを閉められたーー その小さなできごとが積み重なって、いつの間にか「自分で準備ができる子」になっていきます。大きな成長は小さなできごとの積み重ねの先に見えてくるのです。
② 苦手の裏にある強みに目を向ける
小学生のころ、どことなく友だちの輪には入っていましたが、周囲の雰囲気に合わせることにはあまり関心がなく、自分のペースを崩さない子がいました。
中学に進むと、その姿勢が思わぬ形で評価されます。
周りに流されず、自分の考えをしっかり持って動けることが、部活動では「公平に判断できるリーダー」として信頼につながり、ついにはキャプテンを任されることになったのです。
苦手な部分を裏返すと、その子の強みが顔を出すことがよくあります。
忘れ物が多いのは「注意を一つに保ちにくい」からかもしれません。 でもその注意の向きやすさが裏返ると、「いろんなものに気づき、発想を広げられる力」になることもあるのです。
同じように、落ち着きがない子はエネルギッシュで行動力にあふれていたり、こだわりが強い子は一つのことをとことん掘り下げられる集中力を持っていたりします。
一見“苦手”に見える部分が、場面によっては大切な力として発揮されることは少なくないのです。
③ 比べる対象を“過去のその子”にする
「同じ年齢の子と比べてどうか」ではなく、「昨日のその子と比べてどうか」
比べる対象を切り替えるだけで、見える世界はがらっと変わります。
1週間前にはできなかったことが、今日はできている。
昨日は声をかけられなかった子が、今日は「おはよう」と言えた。
先月は5分で飽きていた活動を、今は10分続けられるようになった――
そんなふうに、“過去のその子”と比べてみると、小さな成長がいくつも見えてきます。
そしてその積み重ねは、確かにその子なりの歩みを形づくっていきます。
周囲と比べると「まだできない」と感じてしまうこともありますが、過去の姿と比べれば「できるようになった」姿が必ずあるはずです。
その視点の切り替えこそ、子どもの成長を見守る上でとても大切なのです。
実は365日、増え続けている
「できること」を見るのは、一度きりの特別なことではありません。
日々の中で「小さなできた」を拾い、苦手の裏の強みに目を向け、比べる対象を変えてみる――
そんな視点を積み重ねていくことで、“できることを見る力”は育っていきます。
大げさな取り組みではなく、日常の中に息づく習慣として。
それが、子どもを支え、私たち自身も前向きになれる小さな力になるのだと思います。
コラムについて
日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。
著者プロフィール
こどもサポート はるかぜ 代表
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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