ゲームばかりする子どもたち。それでも学びになる理由
「ゲームばかりしていて大丈夫ですか?」
保護者の方から、そんなご相談をいただくことは少なくありません。私自身も以前は「やっぱり良くないのでは」と思っていました。
けれど、ある子との経験が、その考えを大きく揺さぶりました。
スイッチを買うまでの葛藤
あるお母さんが、息子が小学校3年生のとき「スイッチが欲しいって、せがまれて」とおっしゃっていました。
最初はとても迷ったと言います。
「ゲーム漬けになるのではないか」
「勉強がおろそかになるのではないか」
「目に悪いのではないか」
心配の理由はいくらでも出てきます。
それでも最終的に買ってあげたそうです。
理由は「少しでもコミュニケーションの手段になれば」という思いからでした。
ゲームがつなぐ会話
結果は、予想以上。
ゲームをきっかけに、その子が友だちと交わす会話がぐんと増えたのです。
「昨日あのボス倒したよ!」
「どこまで進んだ?」
そんなやりとりが自然に広がり、関係が深まっていきました。
それまで会話が得意でなかった子が、ゲームを通じて自信を持ち、言葉を交わす楽しさを知ったのです。
「時間は決めた方がいいですか?」
この話を紹介すると、保護者の方から次に必ず出てくる質問があります。
「やっぱり時間を決めてやった方がいいですか?」
私の答えはシンプルです。
どちらでもいいと思います。
もちろん、長時間やりすぎて生活に支障が出るのはよくありません。
けれど「何分まで」ときっちり線を引くことが絶対ではないと思っています。
ご家庭によって状況はさまざま。
「3時間は長い」と思えば、もっと短くしてもいい。
「放課後は自由に」とご両親が納得していれば、それもいい。
ここで言う「納得」とは、親が見ていて“気にならない”状態のことです。
- 学校から帰ってすぐにゲームをしていても、宿題や翌日の準備をちゃんと済ませているなら「これなら大丈夫」と思える
- 2時間ほど遊んでいても、合間に水分補給や休憩を自分で取れていれば、見ていて安心できる
- 休日に長くやっていても、友だちと一緒に協力プレイをして楽しそうなら、むしろ良い時間に感じられる
逆に「寝る時間が遅くなってしまう」「ゲームの後に不機嫌になる」など、見ていて「これは困るな」と感じるなら、それは納得できていない証拠。
だからこそ家庭ごとにルールは違っていいのです。
「ずっとやっていてもいいんですか?」と聞かれることもありますが、私はこう答えます。
「ご両親が納得しているのであれば、それで構わないと思いますよ」と。
大人の視点を変えてみる
専門家の中には「脳への影響を考えると、できるだけ減らすべき」と指摘する声もあります。
研究でも、長時間のゲームやスマホ使用が集中力や生活リズムに影響する可能性は報告されています。
ただ、現場で感じるのは「減らすこと」以上に「家庭が納得できるルールを持つこと」の方が大切だということです。
子どもにとってゲームは、ただの遊びではなく、友だちとつながるための大事な道具になることもあるのです。
遊びのかたちをどう受けとめるか
ゲームばかりする――たしかに心配になる気持ちはわかります。
けれど、その中にも子どもたちが学び、成長していく種が隠れているのかもしれません。
ゲームって本当にただの遊び?
それとも、子どもたちが関わり合うための新しい“言葉”のひとつなのでしょうか。
そして忘れてはいけないのは、画面の中だけが遊びではないということ。
外で走り回り、風を浴び、友だちと顔を見合わせて笑う――リアルな体験は、やっぱりそれ以上の力を持っています。