言葉を探して ― 支援を残す

支援を記録しようとするとき、

いつも「うまく言葉にできないな」と感じるときがあります。

あの時の空気、子どもの表情、場の温度。

頭では分かっていても、いざ書こうとすると、どれも薄くなってしまう。

「どう書けば伝わるのか」ではなく、「そもそも書けるのか」と悩むことすらあります。

けれど、やっぱり書くんです。

なぜなら、書かないと残らないから。

そして、残らないと、誰にも届かないから。

未完成のまま残す勇気

支援の記録というのは、完成品ではなく、

むしろ“途中経過”のようなものだと思っています。

たとえば、「この関わりはまだ模索中です」と正直に書いた記録。

一見中途半端に見えても、そこには“思考の過程”が残っています。

それを見た別のスタッフが「こういう時、私はこうしてみよう」と考える。

つまり、未完成の記録がチームの学びを動かすんです。

完璧な報告書よりも、揺れのある言葉の方が、

人の心を動かすことがある。

書くことに迷いがあるからこそ、その行間に“生きた支援”が滲み出るのかもしれません。

一人の言葉が、チームの財産になる

支援は日々変化していきます。

昨日うまくいった関わりが、今日もうまくいくとは限らない。

だからこそ、私たちは「記録する」という形で、

その一瞬を未来に残そうとしています。

一人のスタッフが書いた言葉が、

別の誰かの支えになることがあります。

「自分も同じように悩んでいた」と気づくことで、

孤独だった思考がチームの中に溶けていく。

記録は“業務”ではなく、“共有の文化”なんですよね。

その文化があるチームは、言葉の温度があたたかい。

間違いを指摘する前に、「そう思ったんだね」と返す余白がある。

支援を言葉で残すというのは、

「伝えるため」だけじゃなく、「つながるため」の行為なんです。

言葉にすること、それ自体が支援

記録を重ねるうちに気づくのは、

“書くこと”そのものが支援を深める時間になっているということ。

書く過程で、自分の関わりをもう一度なぞる。

「どうしてあの声かけをしたのか」

「子どもは何を感じていたのか」

そう考えながら言葉を選ぶと、支援が内側から整理されていく。

書くことは“ふりかえり”であり、

“次の一歩”の準備でもある。

支援は形に残りにくい仕事ですが、

言葉にすれば、確かに誰かの手に渡る。

書くことは、目に見えない支援を、少しだけ見える形にする試みなのだと思います。

あなたは、どんな言葉で支援を残したいですか?

たとえ拙くても、書いてみる。

思い出しながら、語ってみる。

それが支援を次へつなぐ最初の一歩です。

支援の記録は、完成させるものではなく、

支援の途中を“ともに見つめる”ための言葉。

書くことに迷いながらも、

その迷いごと残していけるチームでありたい―― そう思いながら、今日も言葉を探しています。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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