待つことの難しさ――支援の奥深さを感じる

以前触れたように、「待って」という言葉は子どもにとって自分のリズムや考えを守る大事なサインでした。

大人にとって「待つ」難しさ

大人の立場になると少し景色が変わります。

分かっていても実際には難しい。片づけを早く進めたい、失敗を防ぎたい、予定に遅れたくない――そんな思いが重なり、つい先走ってしまうのです。

待てたときに見えた子どもの姿

ある日のお出かけ前の準備。

「自分の荷物をもって、着席してくださーい」と全体に声をかけながら、心の中では「早く出発したい、手伝うべきか…」とそわそわしていました。

けれど最後の最後に、自分から準備を始めた子がいたのです。その背中を見た瞬間、思わず心でガッツポーズ。着席したときに目で「やったね」と合図を送りました。

このとき、他のスタッフも同じように“待つ”選択をしていたからこそ上手くいったのだと思います。

待たないほうがよい場面もある

一方で、危険が迫っているときはためらえません。遊具から飛び降りようとした子には、とっさに「ストップ!」と声をかけ、手を伸ばします。

このときばかりは、待つよりも先に動くことが必要です。

揺らぎを受け止める

集合のときには、まず着席できた子に声をかけながら待つことを心がけています。

ただし「待つ」ことがいつでも正しいわけではありません。待つか働きかけるか――その間を揺れながら選んでいくことになります。

経験によって変わる「待つ」の中身

難しいのは、単に忍耐力の問題ではないということです。

経験を積めば積むほど、子どもの動きを引き出すための声かけや関わり方のバリエーションが増えていきます。

「あと少しで自分から動けそうだ」と見極めて待つこともあれば、視線だけで合図を送ったり、短い言葉で選択肢を示したりすることもできます。

一方で、キャリアが浅いと「見ているだけ」になりがちです。

結果として、子どもからすると「放っておかれた」と感じさせてしまうこともあります。

だからこそ、待つことは想像以上に難しい。経験の差が支援の深さに大きく影響するのだと感じます。

チームで支える「待つ」

そして、その判断は一人のスタッフだけで完結するものではありません。現場では互いの連携があってこそ成り立ちます。

自分だけで抱え込むのではなく、隣にいるスタッフと目を合わせ、合図を送り合いながら決めていく。そこに支援の難しさと奥深さがあるのだと思います。

小さな実践から

まずは1対1の関わりで、時間に余裕があれば「待つこと」をポイントにしてコミュニケーションを試してみてください。

たとえば、一緒に荷物を確認したり、並んで準備を進めたりする共同作業。

そうした小さなやりとりの中に、子どもが自分のペースで動き出すきっかけが隠れています。

私たち支援者にとって『待つこと』は挑戦であり、成長のチャンスでもあります。

それがきっと、子どもたちとの新しい一歩につながるはずです。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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