挑戦のハードルを下げる ― 小さな一歩の積み重ね

「やってみたい」と思う気持ちはあっても、最初の一歩を踏み出すのは勇気がいります。

支援の現場でも、そんな瞬間によく出会います。

“できるかもしれないけど、やっぱり怖い”

その揺れの中に、子どもたちの等身大の思いが詰まっているのだと思います。

私たち大人も同じですよね。

初めての挑戦には、誰でも緊張します。

「失敗したらどうしよう」「周りにどう見られるかな」

その気持ちは、子どもと何も変わらない。だからこそ、“挑戦する”という行為を支える側である私たちが、まずその気持ちを理解していたいと思うのです。

小さな挑戦に目を向けてみる

ある日、製作の時間に「やらない」と腕を組んでいた子がいました。

理由を聞くと、「うまくできないから」と小さな声。

でもよく見ると、材料の色をじっと見つめていました。

私は「色だけ選んでくれる?」と声をかけてみました。

その一言で、その子は少し考えて、静かに一枚の紙を選んだのです。

たったそれだけの行動ですが、その瞬間に“挑戦のハードル”は確かに下がったように感じました。

「作らない」から「選ぶ」へ――

それが、その子にとっての“最初の一歩”でした。

ハードルを下げるとは、甘くすることではない

挑戦のハードルを下げるというと、「甘やかすのでは?」と誤解されることもあります。

けれど実際には、まったく逆なんです。

無理のない一歩をつくることで、「できた」という実感を積み重ねていく。

それが、次の挑戦への意欲を生むのです。

スモールステップという言葉がありますが、

その本質は“段階を細かくする”ことではなく、

“届きそうな距離に変える”こと。

支援では、量を減らしたり、方法を変えたり、一緒に始めたり

ほんの小さな工夫で、挑戦のハードルはぐっと低くなります。

それによって「やっても大丈夫だった」「少しできた」という安心の記憶が増えていくのです。

一歩が積み重なっていく

はじめは「やらない」と言っていた子が、翌週には「これだけやってみる」と言い、

さらにその次の週には「自分で作る」と宣言したことがありました。

その姿を見ながら、「小さな一歩って、こんなにも力があるんだ」と改めて感じました。

挑戦のハードルを下げることは、子どもの歩幅に合わせて道をならすこと。

その道を一緒に歩きながら、「できたね」と共に喜ぶこと。

その積み重ねが、やがて“自分で挑戦できる力”へとつながっていくのだと思います。

そして、大人も

子どもたちを見ていると、ふと自分のことを重ねることがあります。

「もっと上手く話したい」「うまく伝えたい」と思う私自身の姿も、

実は同じように“挑戦のハードル”の前に立っているのかもしれません。

だからこそ、子どもたちの一歩を見るたびに教えられます。

完璧じゃなくても、まずやってみる。

小さな積み重ねの先に、きっと新しい景色が見えてくる――

それは、子どもたちだけでなく、私たち大人にも同じですね。

次の挑戦は、きっと“できることの続き”にあります。

その一歩を軽やかに踏み出せるよう、今日もそっと背中を押していきたいですね。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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