友だちとだからできること
工作の時間。
最初は手を出さず、じっと様子を見ている子がいました。
大人が「やってみようか?」と声をかけても、「うーん」と小さく首を振るだけ。
その隣で、製作が大好きな子が動き始めました。
ハサミで紙を切る音、テープを引く手のリズム、黙々と何かを作り出す集中した表情。
その姿を見ていた子の手が、いつの間にか材料に伸びていました。
この瞬間、私たちの声かけよりも、友だちの姿が一番の誘いかけになっていたのだと思います。
しかもそこに“待ち時間”はありません。
必要な道具は手の届くところにあり、思い立った瞬間に取りかかれる。
放デイの現場では珍しい取り組みかもしれませんが、
この“すぐ始められる環境”が、子どもたちの熱中を支えています。
もちろん安全対策は徹底しています。
けれど、子どもたちが自分のタイミングで動けるようにすることを優先しました。
なぜなら、熱中の“有無”ではなく、熱中に入るスピードと深さがまるで違うからです。
友だちが作り始めると、その勢いに引き込まれるように周りの子たちも集まってくる。
「ここはこうしてみたら?」「それいいね」と自然に声が交わり、
作品の輪がどんどん広がっていく。
その場の空気は、誰かが指示したわけでもなく、子どもたち自身が生み出しているものです。
大人の支援が安心や励ましを届けるものだとしたら、
友だちの存在は挑戦や自発性を引き出す触媒のようなもの。
どちらも欠かせませんが、子ども同士の関わりには大人には出せない力があります。
――友だちとだからできること。
その小さな連鎖が、子どもたちの世界を少しずつ広げていくのだと思います。
コラムについて
日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。
著者プロフィール
こどもサポート はるかぜ 代表
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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