ルーティンをつくるという支援

(シリーズでお届けしています。)

前回はこちら:ルーティンの中で見える成長

あまりにも当たり前すぎて、つい見過ごしてしまうことかもしれません。

特に支援者や親御さんにとっては「帰ってきたら荷物をどうするか」「その次は何をするか」といった流れは、日常の一部でしかないからです。

見過ごされがちな“前の流れ”

多くの支援者は「活動」や「宿題」などをメインと考えてしまいがちです。

もちろんそれも大切ですが、実は本当に欠かせないのは、その前にある“流れ”をつくること。

荷物を置き、手を洗い、落ち着いて座る――こうした当たり前のような動きが安心という背景で、活動や学びにつながっていくのです。

「当たり前の流れを形にしていくこと」って、単なる段取りづけに見えますが、実は立派な支援であり、子育てそのものなんですよね。

子どもの目にうつる最初の一歩

はじめて事業所にやってくる子どもたちにとってはどうでしょうか。

目の前に広がる環境も人もすべてが初めてで、心の中はドキドキと不安でいっぱい。

そんなとき「まずは荷物をここに置こう」「次は手を洗おう」と流れがあること、そして側にいてくれる人がそっと声をかけてくれる。

それだけで日常の見え方は大きく変わるはずです。

お子さんがまだ小さい、いわゆる発達支援の段階では、この“流れ”をたくさん作ってあげること自体が大きな目的。

それは、毎日の繰り返しが「安心」と「できた」を育て、やがて子ども自身の力になっていくからです。

発展していくルーティン

「荷物を置く」「手を洗う」「落ち着いて座る」というのは些細なことに思えるかもしれません。

これらは次のように広がっていきます。

生活面

・食事の支度や片づけを自分の流れとしてできる

・着替えや身支度を時間に合わせて整える

・家の中で自分の役割(ゴミ出し、洗濯物をたたむなど)を持つ

学習面

・学校から帰ってきたら宿題に取りかかる流れ

・忘れ物チェックや提出物をそろえる流れ

・テスト前に勉強の段取りをつける

社会性・コミュニケーション

・友だちとの遊びで「順番を守る」流れ

・グループ活動で役割を果たす流れ

・「あいさつをする」「ありがとうを言う」といった日常のやりとり

自立・社会参加へ

・習い事や学校行事への準備(持ち物・時間管理)

・お金のやりとり(買い物をする、支払いをする)

・公共の場でのルール(バスに乗る、図書館で過ごす)

生活の流れから始まったものがやがてコミュニケーションや社会性へと発展して、成長に合わせて自然に広がっていきます。

小さな流れを大切に

親御さんから子育ての相談を受けると、まずお伝えすることがあります。

「本人が“ここに置きたい”と思えるカバン置き場を作ってみてください」

それだけで帰宅後の流れがスムーズになり、次の行動につながりやすくなりますよ。と。

ルーティンは「生活の繰り返し」だけではありません。

子どもが育っていく中で、時間の使い方や人との関わり方、社会に参加する力へと段階的に広がっていきます。

だからこそ、日々のルーティンを整えることを軽く見てしまうのは支援の根っこを見落とすことにつながります。

この“当たり前の流れ”を大切にしていきたいですね。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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