日々の歩みから見えたもの

これまでに取り上げてきたのは、

「待つこと」

「比べる気持ち」

「ルーティン」

「小さなトラブル」

「やってみたいという思い」など。

どれも特別な出来事ではなく、日常の中でふと出会った子どもたちの姿でした。

振り返ってみると、大きな3つの気づきが浮かび上がってきます。

1.子どもの姿から学ぶ

子どもが見せる「待って」「できない」「やってみたい」というサインは、大人にとって学びの入口。

それは小さな芽のように、関わり方しだいで伸びもすれば、しおれてしまうことも。

ある子がペットボトルを並べたボウリングで「できない」と背を向けたとき、以前の私なら「大丈夫、できるよ」と返して終わりにしてしまっていました。

でも「どこがむずかしい? 一緒にやってみる?」と声をかけ直すと、その後の動きにつながっていきました。

また、工作で「やってみたい」とはさみを手にした子。

危ないからと止めるのではなく「こうすると安全だよ」と隣で一緒にやってみると、次の週には自分だけで最後まで切れるようになっていました。

こうした小さな場面は、芽に水をあげるように子どもの挑戦を支えます。

特別な技術ではなく、

・返事をする
(「待ってるよ」「やってみようか」と声にする)

・認めて伝える
(「始められたね」と言葉にする)

・環境を整える
(道具や場面を整えて挑戦しやすくする)

――些細なことが、子どもたちの成長につながっていきます。

2.大人の姿勢に気づく

比べてしまう気持ちや、待ちきれずに声をかけてしまう瞬間。

子どもに向き合っているつもりが、実は大人自身の姿勢が映し出されています。

支援は「子どもをどうするか」だけでなく、「大人がどう関わるか」を常に問われる営みでもあります。

難しく聞こえますが、できることはシンプルです。

・立ち止まる:
声をかける前に数秒待つ。

・言葉を変える:
「○○さんはできたのに」ではなく「さっきよりできたね」と伝える。

・焦りを出さない:
「早くして」を言わないだけで、子どもは安心して取り組める。

小さな心がけで、関わり方が自然に変わっていきます。

「今ちょっと急いでいるな」と自分で気づくだけでも十分。

その一歩が、支援を豊かにしていくのだと思います。

3.日常の繰り返しが力になる

ルーティンや小さなトラブル、遊びのリクエスト。

特別なイベントや成果発表よりも、日々の繰り返しの中に子どもの成長は表れます。

私がよく思うことは「集合」です。

放課後等デイサービスでは、「時間になったら集まる」という当たり前の行為が意外と難しい。

最初は座れなかった子も、毎日の繰り返しで少しずつ変わっていきました。

スタッフの手を引かれて座っていた子が、自分から椅子に向かえるようになり、友だちの動きを見て自然と一緒に歩き出せるようになる。

こうした変化は一日では見えません。

でも日々の歩みが、ある日ふと「できた」の形になって現れます。

その積み上げこそが、子どもの成長の足場を築いていくのです。

こうして振り返ると、「支援の正解」をひとつ探そうとするほど、かえって遠回りになるのかもしれません。

子どもの姿に耳をすまし、大人自身の姿勢を省みながら、日常の歩みに意味を見いだしていくこと。

それが、子どもたちにとっても大人にとっても学びとなり、これからの答えへとつながっていくと信じています。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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