秘密のメモ②「短い言葉がひらく関わり」
前回は「1語で伝わる声かけ」を紹介しました。
ほんの一言が子どもの表情を変え、関係をあたためる瞬間を実感してきました。
ふと考えてみると、これは子どもたちだけに限りません。
大人同士でも、たった一言で気持ちが楽になったり、背中を押されたりすることってありますよね。
だから結局、子どもたちの支援を通して学ぶことは「人と人との関わり方そのもの」を学ぶことでもあるのだと思うのです。
短い言葉は、その場の空気を動かす小さなスイッチ。
使い方しだいで、気持ちや挑戦を大きく変えていきます。
🟢 承認(できたことを認める)
・「やった!」
使いどころ:
成功の瞬間(小さな達成も含む)に即反応
コツ/注意:
すぐのタイミングと目線・笑顔。多用しすぎて軽くならないように。
派生例:
やったね/やったー。
・「合格」
使いどころ:
身支度チェックや小テスト、確認ごとを“遊び化”したい時
コツ/注意:
親指OKサインやスタンプとセットに。不合格を作らず“もう一回チャンス”を。
派生例:
合格シール/合格です。
・「完璧」
使いどころ:
丁寧にやり切れた時(片づけ、工作、整列など)。
コツ/注意:
大げさリアクションで達成感を増幅。“今日は完璧”など状況限定で完璧主義を煽らない。
派生例:
完璧だ。
・「決定」
使いどころ:
自分で選んだ瞬間(本・色・活動)。自己決定を公に承認。
コツ/注意:
選択直後に短く宣言し場に共有。後から大人の都合で覆さない。
派生例:
自分で決定/決定したね。
🔵 共感(気持ちを受け止める)
・「ほんと」
使いどころ:
子どもの体感・感想に頷きたい時。
コツ/注意:
皮肉に聞こえない柔らかいトーンで。次に一言具体を添えると◎(ほんと、寒いね)
派生例:
ほんとだ。
・いいね
使いどころ:
アイデアや試行の途中を肯定して継続を促す時。
コツ/注意:
具体化して価値づけ(その色、いいね)。惰性の口癖化に注意。
派生例:
いいね、それ。
・「なるね」
使いどころ:
子どもの理由づけ・説明に軽く同調。
コツ/注意:
微笑み+うなずきで温度をのせる。通じにくい場ではなるほどに置換。
派生例:
なるね、たしかに。
・「そうか」
使いどころ:
不満や訴えをまず受け止めて鎮めたい時。
コツ/注意:
低め・ゆっくり。続けて要約すると安心感UP(そうか、ここが困ったんだね)
派生例:
そうか、わかった。
🟠 応援(挑戦を後押しする)
・「いけ!」
使いどころ:
スタート合図・最後の一押し。
コツ/注意:
短く鋭く、手振りで方向を示す。安全配慮、圧になりやすい子には避ける。
派生例:
いける!
・「GO!」
使いどころ:
ゲームや競争、楽しく勢いをつけたい時。
コツ/注意:
カウントダウン→GO!が効果的。
派生例:
レッツゴー
・「前へ」
使いどころ:
列の移動、一歩が出ない時の方向づけ。
コツ/注意:
手で前を示しつつ強制にならない言い回しと併用(前へ、一歩)
派生例:
前へ一歩。
・「おう!」
使いどころ:
子どもが「やる」と言った直後の力強い同調。
コツ/注意:
低めの声量で短く。怒鳴り声に聞こえないよう距離と音量に注意。
派生例:
おう、行こう。
🟣 思いやり(関わりを認める)
・「助かる」
使いどころ:
手伝い・配慮・譲る行為を即時に評価。
コツ/注意:
具体を添える(運ぶの手伝ってくれて助かる)。“義務化”しない。
派生例:
助かったよ。
・「いい心」
使いどころ:
やさしさ・配慮・声かけの質を褒めたい時。
コツ/注意:
やや古風なので言い換えも可(やさしい心だね/やさしいね)。胸に手を当てて「心」を指し示すと伝わる。
派生例:
やさしいね。
・「安心」
使いどころ:
その子の行動で“場”が落ち着いたことを可視化。
コツ/注意:
主体を明確に(◯◯してくれたから、みんな安心)本人の不安には大丈夫を。
派生例:
安心した。
・「だいじょうぶ」
使いどころ:
失敗・転倒・不安時の第一声。
コツ/注意:
目線を合わせゆっくり。乱用せず、まず共感(痛かったね)→だいじょうぶの順だと届きやすい。
派生例:大丈夫だよ。
🟡 盛り上げ(場の空気をつくる)
・「ジャン!」
使いどころ:
見せ場や発表、箱開けなど“タメ”の後。
コツ/注意:
間(沈黙)→ジャン!で期待を演出。大音量は感覚過敏に配慮。
派生例:じゃーん。
・「イェイ!」
使いどころ:
成功・記念撮影・ハイタッチの瞬間。
コツ/注意:
手振りやポーズと同期させると一体感UP。照れ屋には小声で寄り添う。
派生例:
いぇい。
・「おー!」
使いどころ:
集合の掛け声、コール&レスポンス。
コツ/注意:
大人が“呼び”→みんなで“おー!”の型に。騒がしすぎない音量管理。
派生例:おー?→おー!
・「ドン!」
使いどころ:
スタート合図、太鼓的な演出で注意喚起。
コツ/注意:
机を強く叩かず、身振りや楽器で代替。過敏な子には軽音のトン!に。
派生例:
トン!
子どもたちを通して実践してきたことが、やがて私たち自身の関係するすべての人にも通じるのだと思います。
職場の会話でも、家庭でのやり取りでも、短い言葉は驚くほどの力を持っています。
「こんなにシンプルな言葉で気持ちが動くんだ」と気づける瞬間――まさにこれだからやめられないと感じるひとときです。
ぜひ、気軽に楽しみながら試してみてくださいね。
コラムについて
日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。
著者プロフィール
こどもサポート はるかぜ 代表
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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