子どもと一緒にやることの意味

子どもは大人の言葉だけでなく、表情や態度、雰囲気をとても敏感に受け取ります。

大人が楽しそうにやれば「これは楽しいかも」、難しそうにやれば「これは難しいことなんだ」と感じ取る。

この“感情の共有”こそが、関係性を深める大切な要素なのだと思います。

大人の楽しさが伝わるとき

大人がワクワクした顔で取り組むと、子どもは「これは楽しいことなんだ」と感じやすくなります。

子どもは活動そのものの中身よりも、まず大人の表情や感情の色から意味を読み取ります。

たとえば片づけの場面。

大人が歌を口ずさみながら楽しそうに片づけていると、子どもにとっては遊びの延長のように感じられ、自然と取り組みやすくなりますね。

大人の「難しさ」が伝わるとき

逆に、大人が眉をひそめたり、ため息をつきながらやっていると、子どもは「これは大変そう」「難しいことなんだ」と受け取ってしまうことも。

本来は挑戦できる活動でも、「自分には無理かも」という気持ちが先立ち、やる前から諦めてしまうこともあるかもしれません。

一緒に=伝え方

だからこそ「一緒にやる」とき、大人は単に“手本を見せる人”ではありません。

大人の表情や雰囲気を通して、活動そのものの価値や楽しさを伝える存在になります。

子どもは行動だけでなく、その背後にある感情までも敏感に受け取っているのです。

ある相談から

以前、ある保護者の方から「うちの子、全然いうことを聞かないんです」という相談を受けました。

事業所ではきちんと話を聞ける様子もあったので、私はこう尋ねました。

「ついスマホを見ながらお子さんの話を聞くことはありませんか?」

子どもは言葉以上に、親の表情や態度から多くを感じ取ります。

そこで私は「まずはお母さんの好きなことを一緒にやってみてください」とお伝えしました。

数日後、そのお母さんから「一緒にクッキーを作ってみました」と報告をいただきました。

事業所でその子に感想を尋ねると、作る最中にあった小さなトラブルまで楽しそうに話してくれたのです。

その姿を見て、「あぁ、とてもいい時間を過ごしたんだな」とジーンとしたのを覚えています。

「手を添える」と「一緒にやる」の違い

こうした体験からも、「手を添える」と「一緒にやる」は似ているようでいて、子どもに伝わる意味が変わってきます。

手を添える:子どもの動きを支える“後ろからの補助”。安心して挑戦できるようにサポートする。

一緒にやる:子どもの挑戦に横並びで伴走する“並走型の支援”。仲間としての安心感や信頼を育む。

具体的には――

・運動遊び(鉄棒)

手を添える:
腰を軽く支えて、子どもが自分の力で足を上げるのを助ける

一緒にやる:
隣で同じ鉄棒にぶら下がり、「せーの」と声を合わせて挑戦する

・読書・音読

手を添える:
つかえたときに最初の一音だけを添えて出す

一緒にやる:
隣で同じページを声に出して読み始め、流れに乗せる

・片づけ(ブロック)

手を添える:
ブロックを集めやすいよう箱を支えておく

一緒にやる:
大人も一緒にしゃがんでブロックを集め始める

・クッキング(食材を切る)

手を添える:
包丁の握り方や押さえ方を後ろからそっと補助する

一緒にやる:
隣で同じ食材を切り始め、「こうやってみよう」と見せながら一緒に動く

関係性を育てる時間

任せる・手を添える・一緒にやる。

この三つを行き来しながら関わることで、子どもの学びはより確かなものになり、同時に大人との関係性も深まっていきます。

一緒にやるときの大人の表情や雰囲気は、そのまま子どもに伝わり、挑戦への勇気や楽しさを育む。

そう思うと、「一緒にやる」という関わりは、学びを支える以上に“関係を育てる大切な時間”なのだと感じますね。


コラムについて

日々の活動の中で出会った出来事や心に残った一言、小さな気づきを綴っていきます。それぞれの立場にとっての学びやヒントになれば嬉しく思います。

著者プロフィール

こどもサポート はるかぜ 代表 
保護者や子どもたちと日々向き合いながら、運営や経営の立場からも支援のあり方を考えてきました。これまで、人に話すのもためらうような失敗もあれば、思わず飛び上がるような成功も経験してきました。
そうしたリアルな瞬間や運営の中で見えてくる課題を、できるだけ等身大の言葉でお届けしていきます。
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